COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2017年8月27日日曜日

【文献紹介】上腕二頭筋長頭腱の安定化機構

本日紹介させていただく文献は上腕二頭筋腱の安定化機構について解剖学的位置関係より検討された文献です。


新井隆三他:上腕二頭筋腱の安定化機構.肩関節32(3):549−552,2011


対象は解剖実習用屍体10体20側で、肩関節前上方の観察をしています。
結果は肩甲下筋の付着部は小結節上面に停止し、そこから腱性組織が舌部を形成し、foveaに付着します。
SGHLは関節内壁前上面から外側にねじれるように走行し、前下方を支える樋様構造をし、舌部に付着していました。
LHBが関節外に出ていく場所はSGHLとCHLを含む疎性結合組織がLHBの下面を巻き込むようにして肩甲下筋腱の舌部に付着し、舌部下端から結節間溝にかけて経路を形成していました。
筆者は肩甲下筋の全層断裂は舌部によるLHBの支持、舌部に付着する膜様構造の破綻によりLHBの前内方へ脱臼しやすい状態になると考えられると述べています。


CHLの解剖についての勉強していく中で、今回紹介させていただいた文献を見つけました。
CHLはLHB腱の安定にも関与していることがわかり、1つの組織の解剖を理解した上で、その組織が周辺組織とどのような関係にあるのかについても理解を深めていく必要があると感じました。





2017年8月24日木曜日

【文献紹介】内側型変形性膝関節症における前十字靭帯損傷の予測〜顆間窩骨棘とACLの関係〜

 今回は、人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行する際の前十字靭帯(以下ACL)温存型機種(BCR type)を使用する際の、ACL損傷程度の評価の重要性について述べられた文献を紹介させていただきます。



村山雅俊 他:内側型変形性膝関節症における前十字靭帯損傷の予測〜顆間窩骨棘とACLの関係〜.整形外科と災害外科.65(4).692~695.2016


 内側型変形性膝関節症(以下膝OA)に対してTKAを行なった3751膝を対象とされており、全例Kellgren-Lawrence分類はglade3以上でありました。
評価項目は以下の通りとされています。
・術前CTで内側脛骨関節面のcontact point
・大腿骨顆間窩骨棘の部位と大きさ
これらがACL損傷形態とどのように関与しているかを検討されています。ACLの損傷形態は筆者が5段階に分類されています。


結果は以下の通りとなっていました。
ACL損傷形態は軽度損傷例が最も多く(31%)、完全損傷例が次に多かった(23%)
・内側脛骨関節面のcontact pointでは、平均して前方から53%と軽度後方で骨欠損を認めており、ACL損傷の程度との相関では有意な正の相関を認めていた。
・大腿骨顆間窩骨棘は外側になるほど大きくなる傾向であり、顆間窩の外側下部の骨棘面積とACL損傷形態との間では、強い有意な正の相関を認めていた。

以上の結果から、内側脛骨関節面のcontact pointが後方へ位置しており、骨棘が顆間窩外側下部での骨棘が大きいほど、ACL損傷形態の程度は強くなることが分かります。

TKAを行う際、ACLは切除されること場面は多々あります。同時に、ACLを切除しているため、TKA術後の膝はACL損傷膝に近いとされていることも周知されています。

ACL温存型TKAを行うことが可能となれば、術後の膝関節の安定性はより向上することは容易に考えられます。

将来的にTKAを施工せざるを得ない患者様に対して行う治療として、本文献で挙げられている結果で考察しますと、脛骨関節面のcontact pointを修正することで、ACL損傷の程度が緩和され、ACL温存機種の選択により、術後の膝関節の安定性に繋げることも可能になるのではないかということが考えられます。

TKAの機種に関しては、現在も様々な開発が進められています。機種の特徴を把握することはもちろんのこと、どのような病態に適応され、術後どのようなことが考えられるかを知識として身につけることも大事であると感じました。



投稿者:高橋 蔵ノ助

2017年8月20日日曜日

第118回京都支部定例会

昨日第118回京都支部定例会を行いました。
今回は京都下鴨病院為沢一弘先生に「膝OAにおける歩行時痛の解釈」についてレクチャーしていただきました。










膝OA患者で生じる内側部痛は何が原因で生じているかを見極める必要がある、解剖学的な問題で疼痛が出現しているのか、軟部組織性のものなのかで運動療法が適応になるかが決まります。
軟部組織性の要因で疼痛が出現している場合、どの組織が痛みを拾っているのか鑑別することが重要です。今回のレクチャーの中で膝内側部痛が出現した際に鑑別する必要がある組織がいくつか挙げられていましたが、FTjtだけでもたくさんの組織があり、鑑別するためには確実に組織を触り分けれる触診技術と機能解剖学的知識が必要であると思いました。
今回の定例会で学んだことを臨床に生かしていきたいと思います。



9月は整形外科リハビリテーション学会学術集会があるため定例会はお休みです。
次回の定例会は10月28日(土)です。
團野翼先生に腰痛疾患に対する評価と治療Ⅰ「屈曲時痛の解釈と評価のポイント」についてレクチャーしていただきます。
定員は24名です、お早めにお申し込みください。

2017年8月13日日曜日

【文献紹介】人工股関節全置換術前後における変形性股関節症患者の脊椎・骨盤矢状面アライメント

本日紹介させていただく文献はTHA前後での矢状面アライメントの変化について検討された文献です。



小山博史他:人工股関節全置換術前後における変形性股関節症患者の脊椎・骨盤矢状面アライメント.中部日本整形外科災害外科学会雑誌(58)5:885-886,2015

対象は股関節OAによって初回THAを施行した100股です。
片側股関節OA、両側股関節OAの両群を骨盤前傾、中間位、後傾の3つに分けています。
自然立位を矢状面よりX線撮影し計測しています。
検討項目は胸椎後弯角、腰椎後弯角、垂線よ股関節軸との距離、sagittal verteical axis、骨盤傾斜、pelvic tiltで術前後で検討されています。
結果は全群において術前後で有意差を認めなかったと報告しています。
過去の報告と同様に片側股関節OA症例において術後骨盤が後傾傾向、global alignmentの後方移動が見られたましたが、今回の検討では有意差が見られなかったと述べており、global alignmnetに対するTHAの効果や影響は少ないと述べています。



今回紹介させていただいた文献は矢状面アライメントに対するTHAの影響は少ないと述べていますが、この要因として術前の拘縮のが大きく関与している思います。構造の破綻による疼痛や可動域制限は消失していても拘縮は残存していると考えられます。THA後の症例において術後の拘縮予防はもちろん、術前より残存している拘縮に対しても治療を行なっていく必要があると思いました。

2017年8月9日水曜日

【文献紹介】Mikulicz lineとFTAの関係−OAの要因−

 変形性膝関節症には様々な原因が関与していると報告されていますが、その中には大腿骨の外弯変形が関与するという報告もあります。

 しかし、実際の臨床では、大腿骨外弯変形をきたしている患者様のOAの進行度は必ずしも高いとは言い切れないことが多々あります。また、主にTKAHTOを行う際に基準とされる数値は、%Mikulicz lineFTAが主流となっています。

 そこで今回は、膝OAの成因がMikulicz lineFTAにどのような相関があるのかを検証した文献を紹介させていただきます。



松下任彦他:Mikulicz lineFTAの関係−OAの要因−.整形外科と災害外科.66(2).262-266.2017



 観血的治療が適応とされ、手術を施行された原発性内側型OA100下肢を対象に行われ、測定項目は、単純X線立位全下肢長尺画像にて%MAFTA、大腿骨弯曲率、脛骨弯曲率、K-L分類の5項目とされており、各項目間の相関の有無を調査されています。

 結果は、大腿骨弯曲率とK-L分類に相関は認められなかったが、大腿骨外弯がない場合でもK-L分類が高い傾向もありました。また、大腿骨外弯例では、K-L分類glade3の割合が多くなっていました。
 大腿骨外弯はFTAよりもMikulicz lineとより強く相関していましたが、K-L分類に関してはFTAとより強く相関を認めていました。


 今回の研究から、大腿骨外弯変形が膝OAの原因となっているのではなく、膝OAにより、大腿骨が外弯変形をきたす可能性が高いことが考えられます。
 大腿骨が外弯変形する原因として考えられることは、OAの進行を抑えるため、関節内荷重を外側へ移動させようとする生理的変化ではないかということが考えられます。

 以上のことから、私たち理学療法士は、骨形態の修復を行うことはできませんが、今回のような大腿骨の外弯変形などは、立位バランスの改善を理学療法で行うことにより、変形の遅延が見込めるのではないかということが考えられます。


 この患者様は手術せずに理学療法で対処・改善が見込めないか。手術を行わないのであれば、どこが原因となって症状が出現しているのか。
 理学療法評価だけではなく、今回のような画像所見からも考察できるようにならなければならないことが、改めて考えさせられた文献でした。


投稿者:高橋 蔵ノ助

 

2017年8月7日月曜日

【文献紹介】下肢変形に及ぼす大腿骨負荷の影響についての実験的検討


本日は、荷重による大腿骨下端部に生じる回旋トルクについて報告されている文献を紹介させていただきます。
高柳雅欣ら:下肢変形に及ぼす大腿骨負荷の影響についての実験的検討. 臨床バイオメカニクス,Vol372016

この研究は大腿骨に対する鉛直方向荷重が下肢変形に及ぼす影響を実験的に検討することを目的に行われており、モデル大腿骨の骨頭に対して鉛直方向に荷重を与える圧縮試験を実施し、大腿骨下端部に生じる回旋トルクを計測した結果について報告されています。

 方法は、大腿骨モデルを使用し、矢状面から見た際に大腿骨内穎を結んだ線が鉛直になるように設定した線を基準として、後傾0°、10°、20°となるように設定しています。圧縮荷重は大腿骨頭に鉛直方向に最大100N5回ずつ行っています。

結果の一部を紹介させていただきます。各固定位におけるトルクは、すべての固定位において内旋トルクが検出され、大腿骨後傾角度が大きくなるにつれてトルクも増大したと報告しています。

測定器で検出された内旋トルクは、大腿骨に作用しているトルクの反力としてのトルクであるため、大腿骨近位には外旋トルクが生じていることになり、著者らは、これらの結果より、長期間にわたる回旋トルクは大腿骨の外旋化を引き起こすなど、膝OA発症の要因の一つであると考えています。

私自身、膝OA患者さんを担当させていただく機会が多く、一つの要因で解決することは少ないと日々の臨床にて感じています。今回、調べていく中で、膝OA患者さんに対して疼痛を訴える部位に対する評価だけでなく、まずはアライメント評価を行い全体を捉えてから局所に着目していく大切さを改めて感じました。

投稿者:鷲見 有香

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