本日紹介させていただく文献は肩関節挙上時の回旋について検討された文献です。
中川照彦他:肩関節の挙上運動における回旋運動の分析−屍体肩甲上腕関節を用いて−.整形外科バイオメカニクス12:165−169,1990
対象は6屍体10関節で、残存組織は関節包靭帯、烏口肩峰靭帯、烏口上腕靭帯、上腕二頭筋長頭腱です。計測方向は前方挙上、肩甲骨面挙上、側方挙上、45°後方挙上、伸展の5方向です。肩甲骨は固定され、肩甲上腕関節のみで計測されています。
結果は挙上可動域は側方挙上、肩甲骨面挙上、前方挙上、45°後方挙上、伸展の順で大きくなり、外旋可動域は側方挙上、肩甲骨面挙上、前方挙上、伸展、45後方挙上の順で大きくなりました。
骨頭の向きは内外側上顆を結ぶ線は約13°内旋しており、上腕骨頭は約20後捻しているため、約33°後方を向いていました。
肉眼で関節包靭帯を観察すると下垂位では前下方と後下方を比較すると前下方にゆとりがありました。さらにそこから挙上に伴う外旋運動を観察すると前下方にrollingしながらglidingしていました。
筆者は挙上に伴う外旋運動はrollingとglidingが生じる骨形態と関節包靭帯の緊張により生じると考察しています。
この文献から挙上には外旋可動域が必要なことがわかり、肉眼的観察から前下方へ骨頭が移動できる組織のゆとりが必要なことがわかります。今回は関節包靭帯、烏口上腕靭帯、烏口肩峰靭帯のみ組織が残存した状態で検討されていますが、これらの組織だけで見ると前下方に移動できるだけの前下方の関節包靭帯のゆとりと、下垂位の状態で後下方がtightになりすぎていないことが挙上には必要であると考えられました。
拘縮肩の治療を行う際の参考にしたいと思います。
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