今回は、外側円板状半月板に加え、大腿骨顆部での離断性骨軟骨炎を受傷された症例について報告された文献を紹介させていただきます。
水光正裕他:外側円板状半月を伴った大腿骨外側顆離断性骨軟骨炎の一例.整形外科と災害外科.64(4).651~656.2015
今回の文献では外側円板状半月板を伴った離断性骨軟骨炎に対し、モザイクプラスティを施行されていました。術後経過は良好であったと報告されています。
離断性骨軟骨炎の発生要因には、外傷や血行障害、軟骨骨化などの他にも、様々な誘引が挙げられます。しかし、大腿骨外側顆に生じる離断性骨軟骨炎には、外側円板状半月板の有無が関与しているという報告が見受けられます。この機序として考えられるのは、膝屈曲時に円板状半月板が運動に伴って後方への移動が制限され、大腿骨外側顆部に正常よりも多い剪断力が生じてしまい、軟骨部に亀裂や損傷が生じてしまうことが考えられます。
外側円板状半月板に対して、切除術を行った後の患者様の理学療法を経験する機会が最近増えており、その年齢は小学生から成人と幅広くなっております。患者様から頂く質問に共通していることは、「この切除はした方がいいのか?」ということです。
確かに、半月板損傷に対する縫合術や切除術の有無は、どの報告を拝見しても、様々な報告がされています。円板状半月板に関しても、年月の経過により、中心部が損傷し、正常半月板に形態が近づくケースもあるという報告があるように、同様の考え方が出来ると思われます。
しかし、円板状半月板を残存させることにより、上記した離断性骨軟骨炎の発症が考えられることに加え、早期でのOA changeの可能性なども考えられます。このようなことを患者様に説明させていただいています。
では術後理学療法ではどのようなことが重要になるのか。私の考えは他の疾患と変わらず、軟部組織がどのように機能することが、関節にかかるストレスを軽減できるかを考え、それに対してアプローチしていくことではないかと考えています。患者様にはこのようなこともしっかりと伝え、術後の再発を防ぐ努力を共に行っていただいています。
今回の疾患以外でもそうですが、なぜ手術を行い、その後の理学療法では何に注意して行うのか。これを患者様に説明するには、適切な病態把握や適切な期間・強度・頻度を理解しておくことが重要であると、再度認識することができました。
投稿者:高橋 蔵ノ助
Staff profile
COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について
整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。
人気の投稿
-
本日は Bertolotti症候群について紹介させて頂きます。 Bertolotti症候群は1917年にBertolottiが提唱した症候群であり,最尾側の腰椎横突起が肥大し仙骨との 間に関節を形成,あるいは骨癒合した症例に腰痛が生じる症候群とされています。 ...
-
文献紹介 大腿骨転子部骨折において後外側支持欠損が lag screw sliding に与える影響 (徳永真己・他 : 骨折 第35巻、98-102、2013) 大腿骨転子部骨折をshort femoral neck (SFN) で...
-
本日は、半膜様筋-内側側副靭帯にある滑液包(STBと略す)について述べられた文献を紹介します。 Christopher P.et al.:AJR 1996;166:875-877 STBは逆U字型をしており、その深層部は内側半月板後節に隣接し、半膜様筋腱と脛骨内側顆の間に...
-
今回は前・後上腕回旋動脈の起始、走行、分布に関する文献の紹介です。 魚水ら:前・後上腕回旋動脈の起始、走行、分布に関する解剖学的知見 肩関節 2013.37 巻第 3 号: 911-913 上腕骨頭や肩関節の血流には、腋...
-
本日は 非特異的腰痛 について報告されている文献を紹介させていただきたいと思います。 慢性腰痛(非特異性腰痛)の治療 鈴木 秀典 1 , 田口 敏彦 1 1 山口大学大学院医学系研究科整形外科学 脊椎脊髄ジャーナル 29巻1号 pp.35-41 最近では...