COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2016年2月26日金曜日

【文献紹介】棘上筋筋内腱の走行に加齢変化が及ぼす影響について


夜分遅くの更新となり申し訳ありません。本日は文献を紹介したいと思います。
戸田創ら:健常成人における関節窩面に対する棘上筋筋内腱の走行に加齢変化が及ぼす影響.臨床バイオメカニクス36.1-6.2015

 本日は、加齢に伴い棘上筋の筋内腱はどのような変化をするのかを研究された論文を紹介します。棘上筋の筋内腱は筋の前方かつやや表層に存在し、筋の萎縮により筋内腱は前表層へ偏位するといわれています。このことから変性により筋の持つ求心力は変化することが考えられます。
 本論文の研究では、肩甲骨水平面上での筋内腱の走行と関節窩面のなす角の加齢による変化を年代別に比較されています。これに加え、関節窩傾斜角、肩甲上腕関節内外旋角、肩甲骨面に対する骨頭の前後変化量を測定し比較されています。
 測定された中でも、肩甲骨水平面上での筋内腱の走行と関節窩面のなす角度は加齢に伴い関節窩面に垂直になるという結果でした。これは肩甲上腕関節の動態を解釈する上でとても興味深いと思います。加齢による筋内腱の偏位により、肩甲上腕関節の後方から支持する力が低下することで求心位の低下が予測されます。
 しかし結果の捉え方として、筋内腱は骨頭の上方へ偏位したとも考えられます。これにより棘上筋がより骨頭のDepressorとして働きやすくなるのか、骨頭の上方偏位を引き起こしやすくなるのか、それともそれ以外の影響が誘発されるのか、筋内腱の偏位による影響について疑問に思った論文でした。今後も臨床で生かせる知識の一つとなるよう本論文の結果を再考していきたいと思います。


投稿者:中井亮佑

2016年2月23日火曜日

肘筋について

本日は、肘筋の機能解剖学的特徴について報告された文献を紹介します。

F.Molinier et al.:The anconeus,an active lateral ligament of the elbow - new anatomical arguments.Surg Radiol Anat 33:617-621,2011

 本文献は、解剖で得られた肘筋の解剖学的位置や隣接する軟部組織との関係、また先行研究の結果から、肘筋の機能解剖学的特徴について報告されています。15の新鮮屍体30肘を用いて解剖しています。本研究の結果、2つの事実が観察されています。

 1つ目は、上腕三頭筋外側頭と連続性を有すること。肘筋と上腕三頭筋は同じ筋区画内に存在し、肘筋の筋線維は上腕三頭筋外側頭に差し込んでいたとのことです。
 2つ目は、腕尺関節の関節包後外側部に付着すること。これによって、肘筋は腕尺関節の内反ストレスに対する動的スタビライザーとしての一役を担っていると述べられています。

 本報告では、肘筋の機能は肘伸展運動の補助、腕尺関節の動的スタビライザーであると述べられています。肘関節の患者をみる中で、肘筋に疼痛を訴える症例も少なくないと思います。明日からの臨床に活かしたいです。


投稿者:竹下真広

2016年2月18日木曜日

肩甲骨包肩甲骨側付着部の形態について

こんばんは。
文献を紹介させていただきます。


田崎篤ら:肩甲骨包肩甲骨側付着部の解剖学的調査.肩関節363):7877902012

 本日は肩甲上腕関節に存在する関節包の付着形態について研究された論文を紹介します。
肩関節の関節包は、肩甲上腕関節を静的安定機構であり関節の安定性を向上させる役割を持ちます。そのため損傷されると肩甲上腕関節は不安定となり、Bankert lesionKim lesionが引き起こされます。これらの病変は関節包の肩甲骨関節窩付着部に生じる病変と言われています。
 本論文では、この関節包の肩甲骨関節窩付着部の形態を上腕三頭筋長頭と関連させて肉眼解剖学的に調査されています。調査は関節包の関節窩上方、前方、後方及び下方部と上腕三頭筋との関係について行われています。

 肩甲上腕関節の関節包の形態は付着幅は前上方が他と比べやや狭かったとされており、腱板筋群が付着しない部分でもあることから構造的に弱い部分であることが考えられました。また、上腕三頭筋は関節包に付着すると報告されており、他の報告と同一の見解でした。このことより、上腕三頭筋の伸張不全や滑走性低下により上腕三頭筋自体が制限になることに加えて、関節包の伸張が制限され挙上制限の1要因となることを改めて確認できました。

2016年2月14日日曜日

単顆片側人工膝関節置換術(UKA)の成績不良因子について

少し間が空いてしまいましたが、文献紹介をさせていただきます。

今回は、単顆片側人工膝関節置換術(UKA)の成績不良因子の検討に関する文献です。


岡部智行,他:単顆片側人工膝関節置換術の長期成績からみた成績不良例の検討.臨整形外 30(3).271-279:1995


今回は、少し古い文献ではありますが、UKAについて勉強する機会を得た文献を紹介させていただきます。


この文献では、4年間の間でUKAをされた15膝を対象に、日整会OA膝治療成績判定基準における成績優良群と不可群の2群に分けて、成績不良例における要因を個人要因と術中要因の2つに分けて検討されています。


結果としては、成績不良群の特徴として、個人要因としては、年齢、骨粗鬆症、日常の活動性、術前の屈曲拘縮(10°以上)が挙げられており、術中要因としては、脛骨コンポーネントの内反設置(優良群87.4°、不可群80.4° ⇒ 脛骨コンポーネントの前額面上での傾斜)、大腿骨側コンポーネントの外側設置(loading point:優良群0.52、不可群0.68  ⇒  脛骨コンポーネントの全長A/脛骨コンポーネント内側から大腿骨コンポーネントとの接点までの距離B)、FTA矯正角度(7°以上矯正が不良)が挙げられています。

ちなみに、コンポーネントは大腿骨頭から脛骨コンポーネントの中心に下ろした荷重線に対して垂直に脛骨コンポーネントを設置し、その荷重線上に大腿骨コンポーネントが存在するのが理想であると記されています。


この文献では、N数が小さいことや、JOAのどの項目が減点項目であったか不明であること、現在使用されている機種では成績不良となる問題は解消されている可能性があることなどが問題点・疑問点として残りますが、今後のUKAの患者様を診るにあたり、事前に得ておくべき情報を勉強する一助になると感じました。


投稿者:為沢一弘

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