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整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2015年7月11日土曜日

夜間痛を伴う腱板断裂患者に対する超音波ドップラ血流評価

 今回は夜間痛を伴う腱板断裂患者に対する超音波ドップラ血流評価についての文献を紹介します。

寺林ら:夜間痛を伴う腱板断裂患者に対する超音波ドップラ血流評価 肩関節.2012.36巻第2号:507-510

 夜間痛の病態について述べられている研究によると、骨内圧の上昇、肩峰下滑液包の腫脹による圧上昇、烏口肩峰靭帯下の圧上昇、肩峰下滑液包と棘上筋の癒着など、様々な報告があります。その中で夜間痛が強い腱板断裂患者に対する鏡視下腱板修復術の際に、充血した滑膜を関節内の腱板疎部や関節包上に認めることがあることに筆者らは着目し、充血した滑膜の存在は関節包へ流入する栄養血管の血流が増加しているのではないかと仮説を立てています。そこで超音波カラードップラ法を用いて夜間痛を有する腱板断裂患者の関節包栄養血管血流の血行動態を測定し評価されています。

 関節包栄養血管は4本の主血管があり、前方・外側を前上腕回旋動脈、後方・外側を後上腕回旋動脈、内側を肩甲上動脈、下方を肩甲回旋動脈が栄養していると報告されています。このうち前上腕回旋動脈は腱板疎部を含む前方・外側の関節包の栄養血管でかつ上行枝は結節間溝内を走行するためlandmarkとして再現性がよく血管を同定することが可能ということで前上腕回旋動脈上行枝を測定血管とし研究されています。

 夜間痛の定義は報告によって様々であり、病態が混在している印象を持ちます。今回は腱板断裂患者における夜間痛の病態を肩関節を支配する血管に着目し、病態解明に対して重要な現象を捉えることができたと考察されています。このような報告から疼痛と血流増加の関連性を治療介入することで変化があるのか、またどのような治療介入が臨床において有効なのかという視点を持つためにも周辺組織の解剖学的知識はとても重要であり、その評価の一つとして超音波検査の有用性は高いのではないかと感じました。

投稿者:服部隼人


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