COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大予防に対する対応について

整形外科リハビリテーション学会は、オンライン開催または感染対策を徹底した上でのハイブリッド開催により、定例会、学術集会、特別講演会、シンポジウムを開催して参ります。なお、技術研修会につきましては、再開の目処が立っておりません。理事会の決定があり次第、ウェブサイトならびに当ブログにてご報告させて頂きます。

2024年2月9日金曜日

【論文紹介】脛骨後内側縁に沿った脂肪組織の存在について





【目的】
磁気共鳴画像法(MRI)、超音波検査、肉眼的解剖学的検査により、脛骨後内縁に沿った脂肪組織を調べることを目的とした。

【方法】
11名の健常人の下腿をMRIと超音波を用いて内側果から3cmごとに検査した。脂肪率は脂肪率画像を用いて算出した。さらに、新鮮な死体7人について、長母趾屈筋起始部と脛骨後内縁に沿った脂肪組織の肉眼的解剖学的検査を行った。長母趾屈筋起始部と脂肪組織の高さも比較した。

【結果】
生体内では、MRIと超音波を用いて脛骨後内側縁全体に沿って脂肪組織が確認された。Kagerの脂肪組織と脛骨後内縁に沿った脂肪組織との間には、6cmの位置を除いて脂肪率に有意差はなかった。7体すべての遺体で、脛骨後内側縁に沿った脂肪組織が認められ、長母指屈筋起始部よりも有意に遠位であった。

【結論 】
脂肪組織は、MRI、超音波検査、肉眼解剖学的検査により、脛骨後内縁に沿って確認された。したがって、この組織は腱の摩擦や圧縮応力を軽減する役割を果たす可能性がある。



シンスプリントの病態解釈のための解剖学的知識と考えます。
評価、治療へ落とし込んでいきたいと思います。



投稿者:尼野将誉





2024年1月31日水曜日

【論文紹介】FADIR陽性者における股関節屈曲内旋時の関節包と小殿筋の形態学的変化

 



【目的】
FADIR陽性者における股関節内旋時の関節包と小殿筋のin vivoでの相互関係を明らかにすることである。

【対象と方法】
10股関節をFADIR陽性群とし、FADIR検査で股関節痛のなかった10股関節を対照群とした。
4つの股関節回旋条件(外旋20°、内旋10°、外旋/内旋0°、内旋10°)の4条件における超音波画像に基づき、小殿筋(筋腹部)と関節包の方向性を測定した。筋腹部と関節包の方向計測を行い、FADIR陽性群と対照群間で定量的に比較した。さらに、対照群とFADIR陽性群からそれぞれ3名ずつ無作為に臀部3個を選び、磁気共鳴画像解析を用いて分析した。

【結果】
超音波画像上、外旋0°/内旋10°および内旋10°において、FADIR陽性群の小殿筋および関節包の線維は、FADIR陽性群の小殿筋および関節包の線維よりも有意に同じ方向を向いていた。FADIR陽性群の小殿筋と関節包の線維は、対照群に比べ有意に同じ方向を向いていた。磁気共鳴画像では、小殿筋と関節包の間の緩い結合組織は、対照群では10°内旋位で顕著であったが、FADIR陽性群では顕著ではなかった。

【結論】
90°屈曲位での股関節内旋時、小殿筋の筋腹部と関節包は、対照群よりもFADIR陽性群の方が同じ方向を向いていた。関節包は、FADIR陽性群では対照群よりも同じ方向を向いていた。
これは、両者間の疎性結合組織の形態学的変化によるものである。疎性結合組織の病理学的変化は、関節包に対する小殿筋のスムーズな動きを阻害している可能性がある。
FADIR陽性の疼痛を有する患者では、関節包に対する小殿筋のスムーズな動きが阻害されている可能性がある。



FADIRテストはなにをみているのか日々仮説検証を行っていましたが、本論文により軟部組織の構造と形態が可視化されたことによりターゲットとなりうる組織が明確化しました。屈曲時痛を呈する症例には小殿筋と関節包、この深層に走行している大腿直筋半回頭の評価を行うべきと考えます。




投稿者:尼野将誉


2024年1月13日土曜日

【論文紹介】上殿神経は感覚枝を出し大腿外側を支配する

上殿神経は運動枝という認識でしたが、大腿外側領域に皮神経を伸ばしているという論文を拝読したので紹介します。 





【目的】
上殿神経の殿部外側表面への皮膚枝について明らかにすることである。

【対象と方法】
日本人の成人屍体23体(男性15体の26側面、女 性8体の13側面)の観察を行った。臀部表面部位の解剖の際、筋膜を穿通する皮膚枝に色糸で印をつけた。筋膜を注意深く剥がし、印をつけた各枝の起始部を調べた。

【結果】
すべての献体において上殿神経からの皮神経が認められた。

臀部の皮膚神経の分布
臀部の下部と外側は後大腿皮神経の臀部枝(Nn. clunium inferiores)から、上部と背側は仙骨神経の背側枝(Nn. clunium superiores)から供給されている。上部と腹側は腸腰神経から、腹側と外側は外側大腿皮神経からの枝から供給されていた。
5本の枝が大腿筋膜張筋を穿通していた。1本の枝は、中殿筋を穿通していた。

大腿筋膜張筋内の筋内神経分布
これらの穿通性皮膚枝と大腿筋膜張筋への神経との関係を明らかにするために、神経の筋肉内分布を調べた。3本の皮膚枝のうち2本が大腿筋膜張筋を穿通していた。もう1本の枝は筋の背側縁を巻いて筋膜を穿通している。3本の枝が大腿筋膜張筋の背側縁を穿孔した。これらの枝のうち2本は、大腿筋膜張筋への神経が筋に達した直後に筋枝と皮枝に分かれている。もう1つの枝は大腿筋膜張筋への神経から生じ、筋の内側を走り、筋枝を出さずに筋の背側縁を穿通した。

皮膚枝の数
神経から大腿筋膜張筋への皮膚枝はすべての標本で観察された。右側18例中9例(50.0%)、左側21例中7例(33.3%)で1本の皮膚枝が筋背側境界を巻いていた。巻枝のある側では平均3.9本、ない側では4.4本の穿通枝が認められた。


【結論】
上殿皮神経の皮膚枝は、腸腰神経枝(頭側腹側)、外側大腿皮神経枝(尾側腹側)、後大腿皮神経臀部枝(内側背側)、腰神経背側枝(外側背側)神経に囲まれたこの部位の中央に分布している。上殿皮神経の皮膚枝についてさらに詳細な研究が必要である。




投稿者:尼野将誉





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